ご遺族の心に寄り添う、ということ

ご遺族の心に寄り添う、ということ

人々の温かな心を表現するのに「心に寄り添う」という言葉を使ったりします。私たちも、仕事の内容からご遺族の心に寄り添う、ということを良く口にします。しかしご遺族にも亡くなられた故人様にも様々なご事情がおありでしょう。それによって、寄り添い方も違ってくるのではないでしょうか。私どもは、ご遺族や、亡くなられた方のご事情などを詳しく知っているわけではありませんので、実際に葬儀、ご法事をお願いするご僧侶に、空気を読みながら式をお進めいただくようお話をしております。

先日のことですが、どうもあまりご家族との関係がしっくりいっていなかったのではないかと思われると、葬儀社様心配されているご葬儀のご依頼がありました。1日葬で、簡単に済ませたい、戒名も要らないので俗名で、というご要望のご葬儀でした。式を執り行ってくださったご僧侶は、その場の雰囲気を敏感に察してくださったようですが、読経の前に「いろいろなことが有ると思いますが、今だけは、故人様が皆様にしてくださった良いことや楽しかったことを思い出してみてください。そうして、感謝の気持ちで合掌してください。」とお願いして、穏やかで落ち着いた読経をされたそうです。

しばらくすると参列者の中に涙を流される方が出てきて、それが少しずつ広がったといいます。

後日、葬儀社様から、葬儀を行ってくださったご僧侶に49日の法要をお願いしたい、ついてはその時に間に合うように戒名もお付け頂きたいというご依頼が入ったと、連絡頂きました。葬儀の時に、ご僧侶にお話しいただき、忘れていた子供のころの楽しかったことなどがいくつも思い出されて、ちゃんと感謝しようと、ご遺族が皆さんで話し合われたそうです。ご遺族の心に寄り添うというのは、こういうことだと感じた次第です。

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