閑さや 岩にしみ入る 蝉の声
閑さや 岩にしみ入る 蝉の声
これはかの松尾芭蕉が奥の細道の道中、山形の立石寺という山寺で詠んだ、有名
な一句です。私自身も訪問したことがありますが、峻険な山をひたすら登って
いった先にあります。
現代解釈は諸説ありますが、【岩に岩を重ねたような山様で、松や杉、ひのきは
老木となり、古くなった土や石は滑らかに苔むし、岩の上に建つ多くのお堂の扉
は閉じられており、物音ひとつ聞こえない。崖のふちをめぐり、岩を這うように
して仏閣を参拝したが、すばらしい景観は静寂の中でさらに映え、ただただ心が
澄み渡っていくようであった。
その様は、なんと静かに思えることよ。その鳴き声しか聞こえず、かえって静け
さがつのるように感じられる蝉の声は、まるで岩々にしみこんでいるかのようだ】
との一説があります。
急に俳句の解説になってしまいましたが、暑さが日に日に増してき
ましたので
風流に触れ、侘び寂びを感じるのも趣があっていいと思います。
私は、小学生の頃から田舎の秋田に向かう道中に、よく家族で松尾芭蕉の句碑の
ある名所を巡りながら帰省しました。
特に興味があったというわけではありませんが、ちょうど松尾芭蕉が奥の細道の
道中に立ち寄った史跡があったからでした。
夏草や 兵どもが 夢の跡(平泉)
五月雨の 降のこしてや 光堂(平泉)
さみだれを 集めて早し 最上川(最上川)
そして私の祖父母が眠る蚶満寺(開創853年)には、
奥の細道、最北端の句である句碑があります。
象潟や 雨に西施が ねぶの花
西施とは中国春秋時代の美女で、ねぶの花とは合歓の木の花のことです。
現在の、にかほ市となる統合前は象潟では町の花として親しまれていました。
当時の象潟は松島と並ぶ名勝で知られ、松島が『陽』なら象潟は『陰』といった
『寂び』の印象を詠んだ一句だったそうです。
残念ながら1804年の大地震により隆起し、干潟になってしまったので
当時を偲ぶことはできませんが、【雨にけむる象潟は、あたかもまぶたを閉じた
西施のように美しい】と詠んでいます。
お墓参りの際に、干潟に映る九十九島を見て、昔はどれほど綺麗だったのだろう
と回想を巡らせたこともあります。
これからお盆の時期になります。
ご先祖様へのお墓参りの際に、そういった史跡・名勝を巡ってみてはいかがでしょうか?
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