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本で読んだ霊のこと。
佐藤愛子さんという作家さんの随筆を愛読しています。小説は読んでいないので、読者と言えるかどうかは分かりません。どちらかというと信者のような感じでしょうか。戦前に有名人の子として生まれ何不自由なく暮らしながら、長じては戦禍に見舞われ、前夫の方の借金を肩代わりせざるを得ない状況におかれるなど、かなり波乱に満ちた生き様を決して飾らず淡々とリズム良く語る随筆には、その時々の社会の状況や理不尽が映し出されて、読んで飽きることが有りません。内容は時に舌鋒鋭く世間の理不尽を責め、また時には愛する者への慈愛の深さを感じさせ、読むたびに何度も「その通り」と賛意を感じさせられています。その中の一つですが、佐藤さんが北海道にお建てになられた別荘の話が有り、そこに霊が出るというくだりが有りました。で、佐藤さんらしい霊への積極的なかかわりが語られるのですが、話に引き入れられたのは、霊の見える人の話です。人は未練や執着を持ったまま亡くなると、肉体から霊が抜け出してこの世にとどまってしまう。そうしてとどまった霊が見える人には見えるだけだというのです。その上で、霊としてこの世にみじめにさまようことの無いように出来るのは、生きている間だけだというのです。つまり、生きている間は努力が効くけれど、死んでさまよう霊となってしまったら、もう何も出来ないのだから、生きている間に未練を残さないようにしなければいけない、ということ。精一杯生きる、思い残すことの無いように生きる、そうして未練の無い死を迎えたい。そういう感想を抱かせられたお話しでした。